御題

slow and steady wins the race

お久しぶりです。元気にしていますか。 中学生の時には、大変お世話になりました。 私は本当に英語が嫌いで、中2になっても、3単元が全く理解できていないくらいでしたが、先生がいつも丁寧に教えてくれましたね。先生みたいに一人の生徒に対して、しっか…

SSAW

ギターかバイオリンを始めようと思った。 挫折してしまったピアノを諦め、新しい何かを始めたかったのだ。本当は何でもよかった。しかし、未だに弦から離れられない自分もいる。 迷った時は、高橋だ。彼女に相談してみると、「ギターにすればいいよ」と言っ…

流れる

そこは地元の小さな遊園地。 遊具は数える程しかなく、敷地面積も大きいわけではない。しかし、常に、ある程度の人で埋まっている。親子連れもいれば、友達同士、勿論、恋人同士もいる。 ある高校生くらいの男女がいた。女の子はよく笑う子で、服装も露出が…

アパート一周、世界一蹴

「どう? ご飯おいしい?」 『んー。まあまあ』 「田中とこうやって一緒にいるの久し振りだね。いつも他の人のところをふらふらしているの?」 『そだね』 「まあ、いいや。たまにはゆっくりしていってよ」 そういって、津口は私の頭を撫でた。津口はいつも…

1856 - 崩れ -

今日、ついにパードレが島へいらっしゃった。 数日前から、この村にパードレが来島なさるかもしれないという噂が流れて、でもそれは確証がなく、大人たちはそわそわしていた。そして、パードレをお迎えするためには、役人たちに見つからないよう準備を進めな…

プラス

ぽっかりと浮かんだ月の下、心地良い酔いと供に家路を歩む。何は無くとも頗る愉快で、あの人の声が聞きたくなった。片手に携帯電話を持ち、さて、番号を。そういえば、父が電話してくるのも、決まって酔っているときだっけ。良質な酔いは大事な人の声を恋し…

it's all Greek to me

理科室のドアをそうっと開けると、白衣を着た先生と、ゆらゆらした煙が見えた。 「先生、校内、禁煙ですよ」 「お。他の先生かと思って少し驚いたぞ。どうした?」 先生は慌てて煙草の火を消しているようだった。 「分からないところがあるので、質問に来ま…

ひとひら

第一校舎から渡り廊下を通って、突き当たりまで行くと、第二美術室がある。そこでは、美術部員が油絵やデッサンなどの作品を製作していて、少し異様な雰囲気がある。私は美術部員ではないが、美術室までの、このひんやりとした薄暗い廊下を歩くと、冒険心と…

Late though it is, we'll stay a little longer

起きたら、そこは火星でした。 ということは、分かりません。私にとって、一番身近な惑星が火星だったから、そう思ったのかもしれません。ただ、私は出発してから数週間後、宇宙を彷徨った挙句にそこに到着していたのでした。 今、私は四畳半くらいの広さの…

you'd be so nice to come home to

「水谷の好きなものって何?」 佐倉が笑顔で聞いてくるので、私は一瞬、固まってしまった。 そして、何気なくメニューに目を移して言う。 「私はハニーシフォンとブレンドティーでいいよ」 「いや、そういう意味ではなくてね。んー、まあいいか。じゃあ、私…

bystander 

訳あって、死にかけたことがあります。 気が付いたら、病院のベッドの上に拘束され、あれ、私、どうしてこんなことに……と記憶を辿りつつ点滴を受けているということは、全くなく、ああ、これはやばい……と思ったからこそ、自分でタクシーを呼び(さすがに救急…

It was wide of the mark

黒くて硬い学生鞄を開けると、そこには英語のノートも教科書もなくて、その代わりに生物の教科書とぐしゃぐしゃになったプリントが入っていた。 要するに、私の鞄ではなかった。 ネームタグのところを見ると、女の子らしい字で『柴原』と書いてあった。私は…

Not in the least!

「俺、三十歳になったら、死ぬよ」 春成は私に言った。 「どうして?」 「生まれるのは自分の意思ではなかった。だから、せめて、死ぬ時くらいは自分で終わりを決めて死のうと思う」 「そっかあ」 「三十まであと十年はあるし、自分の色々好きなことをやって…

Who is to blame for my personality?

「林田さんに負けちゃった」 「え?」 「県の弁論大会、私は出場できないの」 「あら。そうなの? 残念だったわねえ」 「…………」 夕飯の席で、私は一応、両親に伝えた。 県中学生弁論大会に学校代表として出場できるかどうか、その日に最終選考があった。しか…

I don't care whether you like me or not

目を開けると、薄暗い照明がゆらゆらと見え、ここは自分の部屋ではないなあとぼんやりと感じた。 ゆっくりと体を起こすと、テレビの前のソファに高柳が小さくなって寝ていた。私はどうやらあるホテルの一室にある大きなベッドに寝ていたらしい。私の隣には大…

草上の昼食

女は救いを求める男たちの会話に耳を傾ける。 静けさの中、女は考えた。 言葉で誰かを救おうなど、到底無理なことで、例え、一瞬でも救えたなどと錯覚しようものならば、貶められたのは自分のほうである。 女に出来ることは、己の体を使い、その男の懊悩とし…

距離指数

ショパンの『ワルツ#9変イ長調』を弾き終わると、もう練習を始めてから2時間が経っていた。部活の時間も合わせると、既に5時間は音楽に関わっていたことになる。そろそろ、宿題に取り掛からないといけないと思いつつ、その前に少し休憩をしようと、私は『…

sudden-death

図書館の2階からふと外を見ると、横断歩道をたくさんの人が慌しく渡っていて、しかもその光景が何となくどんよりとしたものだったので、ああ、雨が降ってきたんだな、と私は思った。 梅雨明けが近いのか、今日は珍しく朝から晴れていて、溜まっていた洗濯物…

日溜り

「3×3のマス目に1から9の整数を入れて、縦、横、斜め、3個の整数の合計がいずれも等しくなるように、マス目に入る数字を答えよ」 「ふむ。それは、数学的に解けばいいのか、それともパズル的に解けばいいのか」 「どちらでもいいよ。兄さんが答えを出せ…

おしゃれデパート

The tongue ever turns to the aching tooth. I felt something bitter when I had his big thing in my mouth. Unconsciously, feeling nauseated, I endured on the blanket. What am I doing? I might have loved him, however this act was always the t…

イマジナシオン

「オーストラリア」 「モルジブ」 「イタリア」 「遺跡も素敵」 「バチカン市国」 「ニュージーランド」 「いいね、キウイだ」 「カカポもいる」 「韓国」 「ペ・ヨンジュン……」 私たちはコタツの中にもぐり込み、お金もないのに、行きたい国について語り合…