学習の顛末

「生徒がね、小説を書いてきたの」
彼女は手元のコップを見つめながら言う。
「ふうん。中学生なのにやるなあ」
俺はパソコンのキーを打ちながら、のんびりと答える。
「そうじゃないのよ。書いてきたのが普通の小説じゃなくて、エロ小説なのよ」
「へえ。凄いなあ。数年後には俺の商売敵になりそうだな。俺のよりも面白い官能小説だった?」
彼女の方を振り返ると、キッと俺を睨んでいた。
「あのね、そういう性に関するものを人に隠れて書いたり読んだりするのは思春期にはありがちなことなんだけど、人にわざわざ見せるっていうのはちょっとした異常なの」
「ほう。なるほどな」
「その生徒、連載ものを書いていて、何回も私にそのノートを提出してくるのよ」
「君、その子に狙われてるんじゃないの?」
俺は少し茶化して言った。
「そうではないと思う。けど、私もどうしていいか分からないのよ……」
彼女はふうっと溜息をつく。
「内容はどんな感じ?」
「うーん……、レイプものとか3Pものとか? あまり冷静に読めないから何とも言えないのだけれど……」
「でも、中学2・3年生だったら、もうセックスとかやってるんじゃないの?俺がバイトで塾講師やってる時、そういう生徒は結構多かったけどなあ。だから、性に関することも君が思うよりもオープンに感じてるとか?」
 彼女を見ると、成る程、悩んでいるようだった。
 確かに俺が中学生の頃、頭の中はセックスに関することばかりだった。それが今は、やりたい時にできるし、快感も増すようになってきた。昔よりも手の届くところにあって、気軽さも増している。
 俺は、まだ考えている彼女の近くに行って、彼女を優しく抱きしめる。
「ちょっと。私はまだ悩んでいるのに……」
そう言う彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。柔らかい。
 俺は彼女のベッドまで運ぶ。お互いに服を脱ぎ、あらゆる部分を弄る。女は柔らかい。温かくてすべすべしていて、それだけで快感を感じる。
 ゆっくりと挿入して快感を味わい、顔を上げたときだった。俺の動きが止まる。
「どうしたの?」
彼女は潤んだ瞳で俺を見上げる。
「いや……」
ベランダの方に人影が見えたような気がした。まさか。