2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

自分の境界

クライアントが自殺を図った。 事象だけ見つめれば、このことはもう四度目なので、またあのクライアントか、と同僚たちは思ったかもしれないが、私にはひとつだけ気になることがあった。それは、自殺の原因が私の言葉に起因している、ということだ。本人が病…

夏の思い出

「今日、除霊祭を行う。今から出掛ける準備して」 午前八時、叔父からの電話で起こされ、私は相槌だけで答えた。昨日、寝たのが二時過ぎだから、睡眠時間は六時間弱。まあいいか、と支度を始める。 叔父と私は仲が良い。本当の親子のようだ。そして、叔父は…

流れる

そこは地元の小さな遊園地。 遊具は数える程しかなく、敷地面積も大きいわけではない。しかし、常に、ある程度の人で埋まっている。親子連れもいれば、友達同士、勿論、恋人同士もいる。 ある高校生くらいの男女がいた。女の子はよく笑う子で、服装も露出が…

あましずく

朝日の空の向こう 温度は消えて 左の手のひらは 乾いたままで君の横顔には 触れずに 君が買ったアイスティー 木々が揺れた散歩道言葉は まだ拙くて 伝えることができなくて君が居た左を 限がなくて想うよ今 僕は纏うよ 通り過ぎていく街並みたいに 雨音の消…

アパート一周、世界一蹴

「どう? ご飯おいしい?」 『んー。まあまあ』 「田中とこうやって一緒にいるの久し振りだね。いつも他の人のところをふらふらしているの?」 『そだね』 「まあ、いいや。たまにはゆっくりしていってよ」 そういって、津口は私の頭を撫でた。津口はいつも…

1856 - 崩れ -

今日、ついにパードレが島へいらっしゃった。 数日前から、この村にパードレが来島なさるかもしれないという噂が流れて、でもそれは確証がなく、大人たちはそわそわしていた。そして、パードレをお迎えするためには、役人たちに見つからないよう準備を進めな…