2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

音に揺らいで響いて

ドアを開けると水の滴る彼が居た。「吃驚した」 「いや、俺の家だから居るに決まっているだろう? 吃驚されても困る」 「そうじゃなくて、いきなり裸だから」 「裸じゃない。タオル巻いてる。どうぞ、いらっしゃいませ」 「うん」 私は下半身にタオルを巻い…

賞味期限はおこのみで

気付くのが遅かった。当たり前だけれども、私には見えない世界があって、私に構わず日々変化している。私だけがそれに気付かずに、ぽつんと残されていた。もっと早くに消えてしまっていれば、傷付かなくていいこともあった。そして、何も知らないままだった…

記憶の個室と昇華の問題

目の前の色は鮮やかで、掴み取れるほど意識していられるのに、少し過ぎて去ってしまうと、もうあやふやで霧に傾いている。 俺は文字をひたすら綴っていた手を休め、ふとカレンダーを見た。既に9月も終わりだった。 あっという間に暑い季節も過ぎ行き、秋が…

重大な伝え違いとその違和感

きっとどんなに善良な人であろうとも、この青い空の中の光を手に入れることは出来なくて、そして、善良な人でなければ、深い沼に飲み込まれていくのだろう。 僕たちは海風を感じながら、砂浜にぼんやりと座り込む。 「僕は君のことを好きだから、絶対にひど…

ランチタイムに合うのは孤独という虚栄心の塊ではない筈だ

「このサンドウィッチ美味しいんだけれど、食べる?」 村田さんは紙袋からそれを取り出す。私は首をか弱く横に振る。そして、無理矢理渡された缶コーヒーを一口だけ飲む。 「美味しいのになあ。おすすめなのよ」 彼女は幸せそうにサンドウィッチを頬張る。 …

学習の顛末

「生徒がね、小説を書いてきたの」 彼女は手元のコップを見つめながら言う。 「ふうん。中学生なのにやるなあ」 俺はパソコンのキーを打ちながら、のんびりと答える。 「そうじゃないのよ。書いてきたのが普通の小説じゃなくて、エロ小説なのよ」 「へえ。凄…