恋煩い

 行為の後はどこか体調が優れない気がする。それでも、次に期待してしまうのは何故か。人との繋がりを保ちたいからか。それとも、人との繋がりを断ち切りたいが為か。
 隣では、女が柔らかそうな肌を露わに横たわる。無表情ゆえに何を考えているかは分からない。きっと何も考えてはいないのだろう。
「一寸、煙草を買ってくる」
 そう言ってシャツを羽織ると、女は瞬きだけでそれに答えた。


 2ヶ月か。長く続いたほうだと思う。しかし、これ以上はもう無理だ。次は誰にしようか。時々会っている彼女にするか。それとも、別の女か。
 夜の公園も、彼女の部屋も、何も変わらない。空を掴むような虚無。
 一人で煙草を燻らせると、白い靄が力無げに漂う。それがすぐに消えると、余計に胸に何かがちらついた。



 アパートの前まで戻ってくると少しひんやりとした。
 そして、ドアノブに手をかけると鍵が閉まっている。アパートを出る際に鍵は閉めて来なかったはずなのに。
 仕方なしにチャイムを鳴らす。しかし、反応はない。
「おい。俺だよ」
 反応を伺う。ドアは開かない。
「開けろよ」
 部屋の中に、車のキーも携帯も置いてきているのに、どうすればいいというのだ。
「開けろよ」
 俺はどんどんとドアを叩く。

 その時、微かにドアの向こうで彼女と男の笑い声がしたような気がした。


 何だ。この予感はきっと自分だけではなく、彼女も感じていたんだ。
 このドアを彼女が開けてくれるのは、男との行為が終わった後か、それとも、もう二度と俺に対しては開けてくれないのだろうか。
 ふと空を見ると、ぽつりぽつりと雨が降り出した。
 探して探して見つけようとしているのに、きっと何も見つけられずに、そして終わる。どこかで捩れているのかもしれない。