日溜り

「3×3のマス目に1から9の整数を入れて、縦、横、斜め、3個の整数の合計がいずれも等しくなるように、マス目に入る数字を答えよ」
「ふむ。それは、数学的に解けばいいのか、それともパズル的に解けばいいのか」
「どちらでもいいよ。兄さんが答えを出せるのなら」
「出せるよ。3分待て」
「3分で解けるかな。その間、僕は小説でも読んでいよう」
「了解」
「……」
「……」
「こういうミステリーってさあ……」
「……」
「ねえ、聞いてる?」
「ああ、ごめん。夢中で答えを探していた。いいよ、話続けて」
「小説の中で、犯人は必ずと言っていい程、密室か暗闇で殺人を行うよね。日溜りのぽわぽわとした中での犯人の行動ってあまり書かれたことないように思うんだけれど。僕だったら違った方法でやるけどなあ」
「ほう。例えば?」
「日溜まりの中って良くない? しかも、自分の畑の敷地内でさ。だって、広いしさあ、この辺、家もないし。もし、遠くから僕の姿が見えたとしても、畑を耕してるようにしか見えないよ。そして、殺害後は、畑の隅にでも。丁寧に左から右へと上から順番に埋めてく」
「うむ……」
「日溜りの中に血溜りが。ちょいと呑気な午後にちょいと陰気なここ」
「不謹慎な洒落だな」
「でも埋めたばかりの場所に、マルクスが。おい、そこを掘るんじゃないよ、マルクス。暫くは放置しておくんだ」
マルクスも登場か」
「そして、収穫の時期に兄さんが場所を間違えて掘ったために、あるものを拾ってくるから、僕はこう言うんだ」
「何?」
「よく兄さん、こんな歯拾ったね」
「え」
「それが問題の答えだよ」